東京高等裁判所 平成12年(う)2105号 判決
暴力団幹部であるXが若い衆と共に宅急便を装って被告人に玄関を開けさせ,室内に押し入り,「お前のおかげでうちの若いものが昨日ぱくられたんじゃい。」「どうしてくれるんだ。」などと言って被告人を脅し,覚せい剤を出すように言いながら,家探しをするなどしたこと,そして,被告人に対し,ティッシュにくるまれた短い注射器で,中に覚せい剤らしきものが付着したものを出させ,被告人からこれを取り上げたことは,Xが,被告人の母親の文挟から,被告人に覚せい剤をやめさせたいと相談されたことに基づくものとはいえ,到底許容されるものではなく,違法な行為といわざるを得ない。
しかしながら,関係証拠によれば,Xらが,このような行為をしたのは,Xが文挟から相談されたことを被告人に知られないようにするためであり,また,Xが被告人から覚せい剤を取り上げようとしたのも,X個人が考えたことにすぎないのであり,綾瀬警察署や小岩警察署の警察官らは何らこれには関与していないのである。
そうすると,私人であるXらが被告人宅に押し入り被告人から覚せい剤を取り上げた行為が違法であるからといって,捜査機関によるその後の被告人の現行犯人逮捕,逮捕の現場での本件覚せい剤の差押え等の一連の手続きが違法となるものでなく,本件覚せい剤は捜査機関により適法に押収されているのであって,その押収手続に違法はない。